透析患者さまは、腎臓の機能が低下しているためにおこる症状や合併症を治療する目的で内服薬や注射薬を使用します。
ドクターからのアドバイス
定期的に検査をしましょう!
透析患者さまは、免疫機能が低下しており感染症をおこしやすく、健常人より1.5~4.5倍高い癌の発生率を認めます。また、長期透析による数々の合併症の発症リスクを抱えているといわれています。 消化器系の検査として胃内視鏡および腹部エコーを実施、脳・心臓血管系疾患の検査としては、24時間ホルター心電図・心エコー・頚動脈エコーなどをチェックしています。
透析による骨病変(二次性副甲状腺機能亢進症・骨粗鬆症・アミロイドーシスなど)や血管の状態を見るために、全身(頭部・頚部・腰部・手)のレントゲン撮影や骨密度・副甲状腺エコーなどを実施しています。内シャントの合併症も長期的には増加の傾向にあり、定期的にエコー検査を実施しています。
血液検査に加え、このような検査を定期的に行うことで、全般的に個人の経時的変化を捉え、異常の早期発見と治療に努めています。
よく使用する薬について
二次性副甲状腺機能亢進症に対する薬物療法
腎不全では、食事で摂取したリンが尿中に排泄されないため血中のリンは高くなり(高リン血症)、腎臓でビタミンDが活性化されないため、腸管からのカルシウム吸収低下がおこり血中のカルシウムは低くなります(低カルシウム血症)。
このような病態は副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を亢進させ、骨からカルシウムを遊離させて血中のカルシウムを補おうと働き、骨粗鬆症を引き起こします。 透析患者さまは食事療法に加え、薬物療法による治療でカルシウムとリンをコントロールすることでPTHの過剰分泌を抑制し、二次性副甲状腺機能亢進症による合併症の悪化を防ぎます。 投与量は検査データの変動をみながら医師が調整します。
リン吸着剤
PTHの抑制を目的としてビタミンD3製剤を十分に使用するためには、高リン血症の抑制が必要です。高リン血症は異所性石灰化を助長し血管の石灰化をまねき、心・血管障害など、生命予後へ大きく影響します。
炭酸カルシウム・カルタン | |
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作用 | ・腸管内で食物中のリンを吸着し、便中に排泄します。 ・カルシウムを補給します。 |
注意事項 | ・食事中か食直後に必ず内服しましょう。 ・錠剤は噛んで飲まないと効果が薄いため、噛んで内服しましょう。 ・ビタミンD3製剤との併用で高カルシウム血症になり、十分な治療効果を 得られないことがあります。 |
レナジェル | |
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作用 | ・炭酸カルシウムと同様、腸管内で食物中のリンを吸着します。 ・成分中にカルシウムを含まないため高カルシウム血症にならず、ビタミンD3製剤 との組み合わせで、これまで以上の効果が期待できます。 |
注意事項 | ・食直前に、噛まずに内服しましょう。 ・服用後に便秘、腹痛、腹部膨満感、悪心がみられる場合が多くあります。 その際は医師に相談してください。 |
その他内服薬
降圧剤
腎不全では尿量の減少による体液量の増加や動脈硬化の進行により、高血圧の頻度が高くなっています。適切なドライウェイトでもなお血圧が高い場合は、降圧剤を内服し適切な血圧を維持することで、生命予後を左右する循環器系合併症を予防します。
作用 | ・血圧を下げ、心臓や血管の負担を軽減します。 |
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注意事項 | ・自宅でもなるべく定時的に血圧測定をし、一日の血圧の状態を知りましょう。 ・透析中に血圧が下がりすぎる場合は、透析日の朝の内服を中止するなど 調整してもらいましょう。 ・副作用としてめまい、だるいなどの低血圧をおこすことがあります。 |
カリウム吸着剤(カリセラム・アーガメイトゼリーなど)
腎不全では尿中にカリウムが排泄されないため、血中のカリウムが高くなります。高くなりすぎると手足や唇がしびれ、重症では心停止をおこすため十分注意が必要です。カリウムが多く含まれる果物や野菜などを食べたときは、なるべくカリウム吸着剤を内服しましょう。
作用 | ・腸管内でカリウムを吸着し、便中に排泄します。 |
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注意事項 | ・内服により便秘になりやすくなるため、下剤を上手に併用しましょう。 |
その他の注射
エリスロポエチン
エリスロポエチンは腎臓で産生されるホルモンで、赤血球を産生する働きがあります。腎不全ではこの産生が障害され貧血(動悸・息切れ・易疲労感などの症状)をおこすため、人工的に合成されたエリスロポエチンを注射で補います。
作用 | ・骨髄での赤血球の産生を促し、貧血を改善します。 |
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注意事項 | ・ヘマトクリット値30~33%を目標としてコントロールします。 ・血圧上昇、頭痛などの副作用を起こすことがあります。 ・血清鉄が不足している場合は効果が薄いため、鉄剤を補給します。 |
鉄剤
赤血球は血流に乗って全身を巡り、赤血球内のヘモグロビンを使って酸素を全身に運ぶ役割をしていますが、そのヘモグロビンが作られるために鉄分が必要となります。
作用 | ・エリスロポエチン投与下でも貧血の改善が乏しく、血清鉄が不足している場合に 補給します。 |
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注意事項 | ・吐き気、食欲がないなどの消化器症状を起こすことがあります。 |